一昔前まで、オフィス系ソフトと言えばMicrosoft Officeの独壇場でした。
2000年ごろにフリーのオフィス系ソフトのOpenOffice.orgが登場し、学生時代はお世話になりました。(現在OpenOffice.orgはApache OpenOffice、LibreOfficeに後継)
その後、無料のクラウドサービスであるGoogleスプレッドシート(表計算)やGoogleドキュメント(ワープロ)が登場したりとオフィス系ソフトの選択肢がMS Officeだけでは無くなってきています。
今回、構造設計で最も使用頻度の高い表計算ソフトに関して比較検討を行いました。
構造設計で求められる表計算ソフトの性能
構造設計では平均的なデスクワークに比べて、表計算ソフトの計算量は多いと思います。
表計算ソフトは主に部材の断面計算に用いますが、大規模な建物で部材数が多い場合や1部材あたりの検討の計算量が多くなると、計算させるセルが何千・何万行と続くような場合があります。
そのような時でもなるべくストレス無く作業できることが表計算ソフトの性能として求められます。
①計算速度
計算量の多いシートの場合、時に数分程度の計算時間を要する場合があります。
(これは私の使い方が悪いせいでもあります)
そのような場合でもなるべく早く計算が行われることが望ましいです。
②プログラミング機能
複雑な計算の場合、ワークシート関数だけでなくプログラミングによる計算を行います。(Excelでいうマクロ)
その機能が備えられており、さらに十分なリファレンスがあることが望ましいです。
③印刷・レイアウト機能
構造計算は、計算してOKだからそれで終わりというわけにはいきません。
構造計算書を作成し、役所などの確認を得る必要があります。
そのため、計算結果をわかりやすく出力ための印刷・レイアウト機能が必須です。
計算量が多い場合、表計算ソフトを用いるのではなく、独自のプログラムを組んで計算結果を求めるという方法もあり、その方が描画を省略できるため計算速度は速くなります。
しかし、申請を行うことや、竣工後(退職などで)他の社員による対応が必要となった場合などに備えて、なるべく計算内容の可読性を高くしておくことが望ましいため、基本的には表計算ソフトを用いるべきであると思います。
Excel以外のインストール型ソフト
MS Office以外のインストール型のオフィス系ソフトには「Apache OpenOffice」と「LibreOffice」があります。いずれも表計算ソフトは「Calc」と言いますが、Excelと機能にそれほど大きな違いは無いようです。
ただ、Excelに慣れていると多少操作性が違う、ワークシートが狭い、マクロのリファレンスが少ない、などの若干の使いづらさがあります。
Excelにかなり近い分、機能面ではExcelに対して特筆して優れた点は無く、無料という価格面でのみ優位性があるという感じです。
後述するMS Officeの価格と、構造設計におけるExcelの使用頻度を考えると、すでにMS Officeに慣れており、マクロもそこそこ組めるなら、ストレス無くMS Officeを使い続けるほうがよいと考えます。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートはクラウド型の表計算ソフトで、利用は無料です。
クラウド型のメリットは
- 複数の端末から同一のファイルにアクセスできる。
- サーバーサイドで計算処理を行うため、処理能力の低い携帯端末などで操作しても同じ速度で計算される。
- 複数人で同時に編集が行える。
といった点です。
しかし、現状では計算速度がインストール型ソフトに比べ圧倒的に遅いです。
マクロ機能も「Google Apps Script」という言語で実装可能ですが、実行に5分以上かかる場合タイムアウトエラーが出るらしく論外です。
また、印刷・レイアウトの機能は乏しいです。(ソフトはサーバーで走っていてプリンターはクライアントにあるので当然と言えば当然ですが。)
現状では、構造設計用途でGoogleスプレッドシートを標準にするのは無理そうです。
ただ、複数人で同じファイルを編集できるという点を生かした、社内のプロジェクト管理などの用途には向いていそうです。
Microsoft Office365 について
ここまでMS Officeはインストール型のソフトであるように書いてきたが、MS Officeにもクラウド機能のものがあり、それがMicrosoft Office365です。
Microsoft Office365は月額制で1000円/月程度。
もちろん従来のような買い切りのパッケージ(執筆時Microsoft Office 2016が最新)もあります。
使いそうなWord,Excel,PowerPointが含まれる「Office Home & Business 2016」は37,584円でした。
月額と買い切りのどちらがいいかというのは、今のところ結論が出ていません。
とりあえずは現状持っているバージョンのMS Officeを使います。